2006年4月12日
連合石狩地協 発第28号
札幌地区連合 発第19号
札幌中央労働基準監督署
署 長 金 沢 勉 様
札幌東労働基準監督署
署 長 先 山 明 子 様
連合北海道石狩地域協議会
会 長 山 本 廣 和
連合北海道札幌地区連合会
会 長 山 本 廣 和
2006年度札幌圏労働基準行政に関する要請書
日夜、各種事業団体及び個別事業者に対する指導・啓発を通じ、札幌圏労働者の生活と雇用安定に向けご尽力されていることに対して心より敬意を表します。
また、常日頃より、私ども連合北海道石狩地域協議会並びに連合北海道札幌地区連合会の取り組みに対して深いご理解を賜りますことについて心より御礼を申しあげます。
さて、中央の経済回復に対する評価が高まる中で、北海道をはじめとする地方と中央の格差はより一層の広がりを見せています。この格差は、企業間・個人間の経済的格差に止まらず、労働に関する価値観や人間そのものに対する価値観にまで言及する風潮を生み、私どもとしましては健全な地域社会の形成に対する大きな障害であると考えております。
この危機的状況の中、国政レベルでは、国家公務員の人員削減・公務員給与の削減前提の見直しや新たな労働契約に関する法制定に着手しています。これらの内容について逐次吟味を重ねる場合、将来に向けた安全・安心・豊かさについては、無縁の内容であり、現行の格差を更に助長し、不安定な地域社会の形成に向かうとしか考えられません。当然、労働自身にとっても不合理で納得し難い社会であります。
このような状況は是非とも打開すべきであるという点については、官民を問わず多くの方々が一致するものと考えます。私どもが日夜、相談を受け付ける「さっぽろ労働相談センター」には、公務員や民間に属する労働者、更には事業者からの相談も寄せられることから、悩む姿、解決を求める姿には共通の思いを感じます。
私どもは、地域の当事者多くが現状の問題について共通認識を形成し、解決に向けて議論を重ねることが現状打開の良策と考えます。以上の観点から、私ども連合北海道石狩地域協議会並びに連合北海道札幌地区連合会は、日頃の取り組みの中に於いて、対応方を痛切に願う事項を下記の通り列挙いたしました。貴署に於かれましては種々ご賢察の上、早急に特段の措置を講ぜられますよう強く要請する次第であります。
日夜、各種事業団体及び個別事業者に対する指導・啓発を通じ、札幌圏労働者の生活と雇用安定に向けご尽力されていることに対して心より敬意を表します。
記
T−最低賃金法違反について
国民経済の健全な発展に寄与すること、また労働者の生活安定及び労働力の質的向上と事業の公正競争確保を目的とした最低賃金法の趣旨に則り、次の課題についてより一層厳格な対応を図られること求めます。
1、最低賃金法第5条第1項の規程に違反する法人・事業者に対して、同法第44条に定める罰則を厳正迅速に科すると共に、名称・屋号の公表、是正指導内容の公表等を図り、違反防止に努められたい。
2、最低賃金法違反に対する告発推進を周知した上で、「公益通報者保護法」の目的に則り当該従業員の内部告発に対する保護について徹底されたい。
U−賃金不払について
北海道労働局が2005年度内に受付た個別労働紛争相談件数の中、賃金・退職金などの労働条件引き下げを内容とするものは21.7%を占有する状況にあります。
また、当組織内に設置する「さっぽろ労働相談センター」では2005年内に990人(団体を含む)から労働に関する相談を受付けましたが、19.6%が月例給や残業手当の不払を含めた賃金に関する相談です。労働者の生活の糧という役割のみならず、地域形成の為の原資たるべき賃金に対する不法行為に対しては社会悪として厳正に対処すべきと考えますので、以下の項目につき速やかに取り組まれるよう求めます。
1、労働基準法に定める賃金に関する規程に反した「賃金不払」をなす事業者に対して、労働者への速やかな支払を指導すると共に、名称・屋号の公表、是正指導内容の公表等を図り、今後の違反防止に努められたい。
2、「公益通報者保護法」の目的に則り当該従業員の内部告発に対する保護について徹底し、継続雇用の確保について厳守するよう、事業者に指導されたい。
3、労働者本人又は家族からの「賃金不払」に関する申告を簡便にするための様式を作成し周知されたい。
4、「賃金不払」について事業者へ是正指導した内容につき、労働者本人又は家族からの申出がある速やかに提示されたい。
V−労働災害について
市場競争の激化及び行き過ぎた営利追求の弊害は、職場の人員削減、人間関係の劣化及び弱者に対する排斥という事態を生んでおります。これらの事態には、労働基準法や労働関係法に抵触する「事件」が必ず伴い労働者に大きな被害をもたらすものとなっています。
不法行為による労働者被害は、貴署の強力な指導力の下で根絶を実現する必要があると考えます。
取り分け以下の事項については喫緊の課題であると認識しますので、早急な取り組みを求めます。
1、セクシュアル・ハラスメントによるうつ病対策について
(1)厚生労働省が2005年12月にまとめた、職場での性的嫌がらせ(セシュアル・ハラスメント)によってうつ病などの心の病が起きた場合の労働災害認定関する見解について、貴署管轄内事業所に広く周知をされたい。
(2)前項の見解にもとづく貴署窓口の対応方について、均一した内容となる旨、各監督官へ内容を徹底された。
(3)被災者・労働者に対する事情聴取につき、二次被害を生ずることのないよう、細心の配慮を図られたい。
2、「いじめ」・パワーハラスメントについての労災適用事例を作成し広く周知をなされたい。
3、労働災害の本人申請に関する周知促進について
労働者本人からの労働災害申請について、対応窓口や申請方法並びに申請に要する必要書類等について広く周知をなされたい。
4、職場復帰についての事業者配慮についての指導
メンタル被害を含む労働災害罹災者の職場への復帰について、期間並びに業務内容に配慮し完全復職を実現する旨、事業者への指導を強化されたい。
W−法定外長時間労働の撲滅に関する啓発事業
法定労働時間を大幅に超過する業務についての相談が多発しております。大幅に超過する理由としては、休日出勤や長時間労働の強要が挙げられます。
貴署の強力な指導の下、労働時間に関する法規制を事業者に周知徹底し労働者保護を推進するため以下の取り組みを徹底するよう求めます。
1、休日が確保できない、長時間労働を拒否できない等の相談苦情につき、専用窓口を設置するなどして、強固に取り組みを推進されたい。
2、旅客自動車及び貨物自動車の運転業務に従事する労働者の長時間労働につき、法令・通知遵守の稼働とすべく事業者への指導を強化されたい。
X−有期雇用契約に関する事項について
平成15年厚生労働省告示第357号に定める「有期労働契約の締結、更新及び雇い止めに関する基準」の適正な運用を推進するため貴署主導の下、次の点に留意し事業者に指導説明をなされたい。
1、低コスト雇用契約書の撤廃と改善
労働日数及び労働時間等の労働条件について、労働実態と大きく乖離するとの申告が当該労働者よりなされる場合、当該労働者の意向に沿う契約内容にすべく事業者を指導監督されたい。
2、雇用契約に定める時間以上の勤務時間について
札幌圏内の雇用情勢を鑑み、雇用契約に於いて合意した契約勤務時間を超過した時間については法定割増率の摘要とすべく、実例を提示し国へ上申されたい。
3、偽装雇用に対する取り締まり
個人事業主との業務請負契約を装い、業務履行の実態については出退勤時間管理、業務履行場所の指定及び売上金の管理など全てを契約元が管理する、偽装雇用につき労働者保護の観点から徹底した是正指導をなされたい。
4、契約解除・解約・更新拒否時にその理由を明示する旨の周知
事業者が当該有期労働契約の解除・解約・更新拒否をする場合の理由について、事前に当該雇用契約書又は就業規則に明示する旨、事業者へ周知指導をされたい。
Y−介護労働者の処遇改善
本年4月1日からの改定介護保険法の施行に伴い、介護労働者、取り分け在宅ホームヘルパーの労働条件は厳しさを増しております。その厳しさの背景については、法令違反の内容も多く存在することから、貴署並びに厚労省の周知指導が求められます。つきまして、以下の項目につき早急な対応が必要と考えますので、速やかなる善処を求めます。
1、厚労省通達(2004年8月27日 基発第0827001号)に基づき作成された、「訪問介護労働者の法定労働条件確保のために」を全ての介護事業主に配布すると共に、管内基礎自治体の介護担当窓口に配布されたい。
2、労働災害適用推進
ホームヘルパーの労働災害の適用について、より一層の推進を図られたい。
3、メンタルヘルス対策
ホームヘルパーのメンタルヘルスケアにつき「札幌地域産業保健センター」の活用も含め、事業者が積極的な取り組みを図るよう指導強化をされたい。
Z−緊急要請
1、人員配置
労働基準行政の地域に於ける重要性、取り分けて、札幌圏に配置される各署の役割について十分な説明を上庁に上申するなどして、現行人員を補充する適正な人員を確保するよう強く求めます。
2、季節労働者対策について
(1)賃金不払相談・労災隠しについて
季節労働者の賃金不払及び労働災害に関する隠蔽・隠匿についての相談が急増しています。
時期に応じた専用の窓口を設置するなどして、効果を生ずる対応を図られたい。
(2)賃金確保について
賃金不払に対する取り組みにつき、事業者の失踪等により賃金確保について長期又は困難を要する事態が多発しております。
事業者の失踪などにより実質倒産・事業停止と判断される場合については、賃確法の適用が容易となる旨の取り扱いをされたい。
3、障害者自立支援法施行に伴う労働条件不利益変更
同法施行に伴い、合理的な理由のない労働条件不利益変更がなされ雇用不安に悩む労働者からの相談が寄せられています。各施設及び事業者団体に対する、適切な指導を求めます。
4、高齢者雇用安定法施行に伴う労働条件不利益変更
同法の施行に伴い、対象労働者の合理的ではない選別や労働条件の大幅な切り下げを提示されているとの相談が寄せられています。各事業者及び事業者団体に対する、適切な指導を求めます。
以 上