TOP >> 札幌圏雇用センサス 最新号 >> 2005年 労働相談の傾向分析

2005年 労働相談の傾向分析

2006年3月31日

| <<前のページ  目次  page1  page2  次のページ>> |

まえがき

2005年は失業率、有効求人倍率などの労働指標や経済指標の改善などから、政府、財界、マスコミによって年初から景気回復が叫ばれ、 労働相談も3月までは前年より件数が減少し、賃金未払いや解雇関連項目が減少するなど、景気回復の兆しを窺わせるものがありました。 しかし4月に前年並みの件数に達した後は、減少するはずの月もさほど下降することなく、12月には遂に当年最高の件数を記録し、 通年でも過去の相談件数を11%上回りました。

進行する規制緩和によって巨額の利益を獲得する「勝ち組」が現れる反面、そのために犠牲にされる夥しい「負け組」が現れ、 不法な労務管理と上司の苛め、それらによる健康障害などで多くの労働者が苦しみ、意に反して経済社会からドロップアウトしてゆく現実が、 労働相談を通じて目の当たりにした2005年であったと記録しておかなければなりません。

T 取り組みの概況 (添付資料1および2)

2005年は相談者990人から1,640件の相談を受けました(連合などが主催する集中相談の相談者105人を除く)。 相談者のうち1割弱はリピーターです。

相談の手段は、当センターでの面談81人、電話による相談897人、メールおよびFAXによるもの12で、 電話相談のうち専用フリーダイヤルによるものが687人で77%を占めています。 またメールおよびFAXの場合は可能な限り電話に切り換えて対応することとしています。

990人の相談者のうち、問題処理に関与したものは33件(3.3%)、求めに応じて他の機関などを紹介したもの106件(10.7%)で、 その他851件(86.0%)は相談のみとなっています。また、当センターの関与により10の単位労働組合が結成され、 パートユニオン加入者を含めて152人(非相談者を含む)が組合に組織されました。

問題処理に関与した33件のうち24件は労働組合結成またはパートユニオン加入により、団体交渉その他の方法で22件が解決されました。 他9件は相談のみで終結しています。なお、2005年は前年繰越4件のうち3件が解決され、2006年に3件が繰り越されました。 うち2件は訴訟事件となっています。

他の機関などの紹介先は、労働基準監督署、労働局、ハローワーク、社会保険事務所、労働委員会など労働関係行政機関が64件、 労働組合26件、弁護士10件、警察その他12件となっています。

U 労働相談の概況

 1. 相談者・相談件数

(1)相談者・相談件数および増減 (添付資料3)

2005年の相談者数990人、相談項目別の相談件数1640件は前年に比べて相談者数で92人(10.2%)相談件数で210件(14.7%)増え、 対平年(前2年)とは同じく65人(7.0%)と165件(11.2%)増加し、統計を始めた2003年以来の最多数となりました。

相談者1人平均相談件数は1.7件で平年より0.1件増加し、相談内容は複雑さを増しています。

(以下、相談者数は人、相談件数は件のみで表し、カッコ内の百分率は%を省略)

(2)男女別の状況 (添付資料3)

男女別相談者数と相談件数は、男性449人755件、女性541人885件で、従前同様に女性が男性を上回りました。 平年と比べて男性は10人、24件の増、女性は55人141件増で、女性は男性の増に対し相談者5.5倍、相談件数5.9倍の増となり、 男女の構成比は拡大しました。

道内の女性就業者の割合(05年平均41.7%)で換算すると、女性の実質相談者比率は男性の1.68倍であり、女性労働者の拡大と共に、 これをめぐる労働問題が急速に増加拡大しています。

(第1表)         【男女別相談者数・相談件数の対平年増減比較】
相 談 者 数   人(%)相 談 件 数    件(%)
女  性男  性女  性男  性
2005年 990541(54.6)449(45.4)1,640885(54.0)755(46.0)
平  年 925486(52.6)439(47.4)1,475744(50.4)731(49.6)
増  減 +65+55(+2.0ポ)+10(-2.0ポ)+165+141(+3.6ポ)+24(-3.6ポ)

(3)相談者の月別傾向 (添付資料4)

12ヵ月の月別相談者数は、1月の61人から4月まで直線的に増加し、 8月に74人に減少した後は12月の96人まで再び増加して右肩上がりのN宇カーブとなりました。 平年と比べると、相談者が減少する5〜6月、8月の減少が小さく、12月は逆に増加するという異例の結果となりました。

(第2表)           【月別相談者数の対平年増減比較】
1月2月3月4月5月6月 7月8月9月10月11月12月合計
全  数05年 617085929091 797477878896990
平 年 647484917377 786479928963925
増 減 -3-4+1+1+17+14 +1+10-2-5-1+33+65
雇用形態別社 員 282833373137 343239514147437
パート 171824312422 232616181824261
不明他 898111714 8265147109

 2. 雇用形態別、業種別の相談者数・相談件数

(1)雇用形態別の相談者・相談件数の状況 (添付資料3)

◇「不明その他」を含む8雇用形態の平均相談者数は124人、平均相談件数は205件で、 相談者数は「社員」「パート」「不明その他」で8割以上を占めています。

「社員」では男性が7割弱を占め、「パート」では女性が9割以上を占めています。

◇50人以上の相談者があった5雇用形態のうち「社員」「パート」「契約社員」「臨時・アルバイト」の相談者数は平年より増加し、 「不明その他」は減少しました。構成比では「社員」「臨時・アルバイト」も減少しました。 「臨時・アルバイト」以外で女性相談者の増加が男性より大きく、減少が小さかったことが、男女の相談者比率を拡大しました。

◇前記5雇用形態の相談件数はいずれも増加し、1人当たり相談件数は「臨時・アルバイト」が平均より0.2件多い1.9件、 「社員]「契約社員」が平均の1.7件、「パート」1.6件、「不明その他」1.4件であり、雇用形態により抱える問題の複雑さの違いが表れています。

(2)業種別の相談者・相談件数の状況 (添付資料5)

◇20業種のうち相談があったのは18業種で、18業種の平均相談者数は55人、平均相談件数は91件でした。 100人以上の相談者があった「(20)分類不能その他」(236人)「(10)卸・小売業・飲食店」(166人) 「(18)その他サービス業」(114人)の相談者数は全体の54%を占めています。

◇相談者数が50人以上あった6業種の相談者数および構成比は、平年と比べて「(13)医療・福祉・医薬品業」 「(10)卸・小売業・飲食店」「(4)建設・設計・重機業」の3業種は減少し、 「(18)その他サービス業」「(14)ビル管理業」「(20)分類不能・その他」の3業種では増加しました。

◇上記6業種の相談件数は平年に比べて「(10)卸・小売業・飲食店」以外は増加し、 相談者1人当たり相談件数は「(18)その他サービス業」1.8件、「(4)建設・設計・重機業」「(10)卸・小売業・飲食店」 「ビル管理業」1.7件、「(13)医療・福祉・医薬品業」1.6件、「分類不能・その他」1.3件となっています。

(3)雇用形態別・業種別の相談者分布 (添付資料2)

第3表は上記6業種と主要3雇用形態の連関表で、この中には「パート」男性を除く各雇用形態と各業種の最多相談者が含まれ、 各雇用形態および業種における相談者の65%以上が集中しています。

(第3表)       【男女雇用形態別・業種別相談者数分布、相談者集中度】

(網掛けは各雇用形態別び相談者の多い業種)

雇用形態 (人) 社 員パート不明その他 全雇用形態計3形態
集中度
業 種 男性女性男性女性男性女性 男性女性合計
(4)建設・設計・重機業 3411111025517 7281.9%
(10)卸・小売業・飲食店 5815454437393 16683.1%
(13)医療福祉・医療品業 1135218131566 8186.4%
(14)ビ ル 管 理 業 1044182824 5269.2%
(18)その他サービス業 2317339584173 11483.3%
(19)分類不能・その他 6437154253598138 23691.1%
全 業 種 計 293144232385455449541 99081.5%
6業種集中度(%) 68.382.665.277.384.892.769.076.0 72.8

 3. 相談項目別の相談者・相談件数

(1)相談項目別相談者数・相談件数の状況 (添付資料6)

◇26の相談項目のうち、「(14)定年制度・再雇用」を除く25項目について相談があり、25項目の平均相談者数は39.6人、 平均相談件数は65.6件となっています。

◇相談者が相談の主目的とする項目(1人1件、以下「主相談項目」)は、「賃金関係5項目」(194人、うち「(4)賃金未払ほか」108人、 「(5)残業代未払ほか」50人)が最も多く、「(11)解雇・雇止め・退職」(174人)「(6)就業規則・雇用契約」(91人) 「(22)経営問題・労務管理」(90人)の4項目で55.5%を占め、他の項目では66人以下となっています。

なお、「賃金関係」5項目を項目別に分けた後の多数相談者順は「(11)解雇・雇止め・退職」「(4)賃金未払ほか」となります。

◇相談件数の多い相談項目の相談件数は第4表のとおりで、7項目で相談件数の70%以上を占めています。

◇全項目の対平年相談件数が増加した項目は「(6)就業規則・雇用契約」(+59件)など14項目。 減少した項目は「(11)解雇・雇止め・退職」(-37件)など12項目。

相談件数の多い7相談項目の対平年構成比比較では、「(11)解雇・雇止め・退職』「賃金関係」「(9)労働時間・休憩・休日」 の3項目が9.3ポイント減。「(6)就業規則・雇用契約」「(22)経営問題・ 労務管理」「(21)差別・嫌がらせ・セクハラ」 「(16)雇用保険・労災保険」の4項目が6.4ホイント増。

なお、相談件数全体の大幅増加により、相談件数は前記9.3ポイント減に対して73件増。 同6.4ポイント増に対して149件増となり、「賃金関係」中の「(5)残業代未払い・問合わせ」は、 構成比は減となりましたが相談件数では1増となっています。

(2)相談項目別違法件数の状況 (添付資料7)

◇相談の内容が何らかの法律に抵触する違法件数は、相談件数1640件のうち659件あり、違法率は40.2%、 平年と比べて(平均)4.7ポイント減となっています。

◇26相談項目のうち、違法率80%以上の項目は「(20)男女差別・女性保護」「(4)賃金未払・遅配」、「(5)残業代未払・問合わせ」、 「(9)労働時間・休憩・休日]で、他の項目は50%以下。

◇平年と比較して違法率が増となった相談項目は「(9)労働時間・休憩・休日」「(22)経営問題・労務管理」「(4)賃金未払ほか」 「(26)その他」の4項目。

相談件数が多く、違法率減の程度が大きい項目は「(10)雇用保険・労災保険」「(6)就業規則・労務管理」 「(21)差別・嫌がらせ・セクハラ」「(11)解雇・雇止め・退職」など4項目

(3)相談項目別・男女雇用形態別相談件数分布 (添付資料8)

◇第4表は、相談件数の多い7相談項目と主要3雇用形態の連関表で、雇用形態別の最多および次位相談件数が含まれ、 主要な相談状況の傾向を示しています。

(第4表)         【相談項目別・男女雇用形態別相談件数分布】

(網掛けは男女雇用形態別の最多および次位相談件数の項目)

社 員パート契約 全雇用形態計主要
相談
3形態
集中度
男性女性男性女性男性女性 男性女性合計
賃 金 関 係 123361252515174131 305(194)79.7%
(6)就業規則・雇用契約 412424741462112 174(91)75.9%
(9)労働時間関係 3320621354247 89(26)98.9%
(11)解雇・退職・雇止め 74444591217114139 253(174)83.0%
(16)労 働 保 険 209327244053 93(66)69.9%
(21)差別・嫌がらせ・セクハラ 2517224173160 91(57)83.5%
(22)経営問題・労務管理 4526450866599 164(90)84.8%
全項目相談件数
(相談者数)
507
(293)
236
(144)
41
(23)
386
(238)
42
(27)
80
(37)
755
(449)
885
(541)
1640
(990)

(990)
78.8%
(77.7)
6業種集中度(%) 71.274.680.572.583.385.064.467.1 65.9(70.5)

(4)相談項目別・業種別相談件数分布 (添付資料9)

次表は、相談件数の多い上位7相談項目と上位6業種のうち「(20)分類不能・その他」を除く5業種における相談件数の連関表で、 各業種の最多および次位相談件数の項目が含まれています。

(第5表)          【業種別・相談項目別の相談件数分布】

(網掛けは業種別の最多および次位相談件数)

(4)
建設・
設計・
重機業
(10)
卸・
小売業・
飲食店
(13)
医療福祉・
医薬品業
(14)
ビル
管理業
(18)
その他
サービス業
全業種
合計
主相談
者 数
5業種
集中度
賃 金 関 係 3574191743 305(194)61.6%
(6)就業規則・雇用契約 628171426 174(91)52.3%
(9)労働時間関係 5195312 89(26)49.4%
(11)解雇・退職・雇止め 1654171238 253(174)54.1%
(16)労 働 保 険 1215459 93(66)48.4%
(21)差別・嫌がらせ・セクハラ 71311611 91(57)52.7%
(22)経営問題・労務管理 824201030 164(90)56.1%
全項目相談件数
(相談者数)
119
(60)
289
(124)
133
(57)
86
(44)
205
(96)
1,640
(990)

(990)
50.7%
(38.5)
6業種集中度(%) 74.8%78.5%69.9%77.9%82.4% 71.3%(70.5%)

| <<前のページ  目次  page1  page2  次のページ>> |