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まえがき
2005年は失業率、有効求人倍率などの労働指標や経済指標の改善などから、政府、財界、マスコミによって年初から景気回復が叫ばれ、 労働相談も3月までは前年より件数が減少し、賃金未払いや解雇関連項目が減少するなど、景気回復の兆しを窺わせるものがありました。 しかし4月に前年並みの件数に達した後は、減少するはずの月もさほど下降することなく、12月には遂に当年最高の件数を記録し、 通年でも過去の相談件数を11%上回りました。
進行する規制緩和によって巨額の利益を獲得する「勝ち組」が現れる反面、そのために犠牲にされる夥しい「負け組」が現れ、 不法な労務管理と上司の苛め、それらによる健康障害などで多くの労働者が苦しみ、意に反して経済社会からドロップアウトしてゆく現実が、 労働相談を通じて目の当たりにした2005年であったと記録しておかなければなりません。
T 取り組みの概況 (添付資料1および2)
2005年は相談者990人から1,640件の相談を受けました(連合などが主催する集中相談の相談者105人を除く)。 相談者のうち1割弱はリピーターです。
相談の手段は、当センターでの面談81人、電話による相談897人、メールおよびFAXによるもの12で、 電話相談のうち専用フリーダイヤルによるものが687人で77%を占めています。 またメールおよびFAXの場合は可能な限り電話に切り換えて対応することとしています。
990人の相談者のうち、問題処理に関与したものは33件(3.3%)、求めに応じて他の機関などを紹介したもの106件(10.7%)で、 その他851件(86.0%)は相談のみとなっています。また、当センターの関与により10の単位労働組合が結成され、 パートユニオン加入者を含めて152人(非相談者を含む)が組合に組織されました。
問題処理に関与した33件のうち24件は労働組合結成またはパートユニオン加入により、団体交渉その他の方法で22件が解決されました。 他9件は相談のみで終結しています。なお、2005年は前年繰越4件のうち3件が解決され、2006年に3件が繰り越されました。 うち2件は訴訟事件となっています。
他の機関などの紹介先は、労働基準監督署、労働局、ハローワーク、社会保険事務所、労働委員会など労働関係行政機関が64件、 労働組合26件、弁護士10件、警察その他12件となっています。
U 労働相談の概況
1. 相談者・相談件数
(1)相談者・相談件数および増減 (添付資料3)
2005年の相談者数990人、相談項目別の相談件数1640件は前年に比べて相談者数で92人(10.2%)相談件数で210件(14.7%)増え、 対平年(前2年)とは同じく65人(7.0%)と165件(11.2%)増加し、統計を始めた2003年以来の最多数となりました。
相談者1人平均相談件数は1.7件で平年より0.1件増加し、相談内容は複雑さを増しています。
(以下、相談者数は人、相談件数は件のみで表し、カッコ内の百分率は%を省略)
(2)男女別の状況 (添付資料3)
男女別相談者数と相談件数は、男性449人755件、女性541人885件で、従前同様に女性が男性を上回りました。 平年と比べて男性は10人、24件の増、女性は55人141件増で、女性は男性の増に対し相談者5.5倍、相談件数5.9倍の増となり、 男女の構成比は拡大しました。
道内の女性就業者の割合(05年平均41.7%)で換算すると、女性の実質相談者比率は男性の1.68倍であり、女性労働者の拡大と共に、 これをめぐる労働問題が急速に増加拡大しています。
(第1表) 【男女別相談者数・相談件数の対平年増減比較】
相 談 者 数 人(%) | 相 談 件 数 件(%) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
計 | 女 性 | 男 性 | 計 | 女 性 | 男 性 | |
2005年 | 990 | 541(54.6) | 449(45.4) | 1,640 | 885(54.0) | 755(46.0) |
平 年 | 925 | 486(52.6) | 439(47.4) | 1,475 | 744(50.4) | 731(49.6) |
増 減 | +65 | +55(+2.0ポ) | +10(-2.0ポ) | +165 | +141(+3.6ポ) | +24(-3.6ポ) |
(3)相談者の月別傾向 (添付資料4)
12ヵ月の月別相談者数は、1月の61人から4月まで直線的に増加し、 8月に74人に減少した後は12月の96人まで再び増加して右肩上がりのN宇カーブとなりました。 平年と比べると、相談者が減少する5〜6月、8月の減少が小さく、12月は逆に増加するという異例の結果となりました。
(第2表) 【月別相談者数の対平年増減比較】
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 合計 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
全 数 | 05年 | 61 | 70 | 85 | 92 | 90 | 91 | 79 | 74 | 77 | 87 | 88 | 96 | 990 |
平 年 | 64 | 74 | 84 | 91 | 73 | 77 | 78 | 64 | 79 | 92 | 89 | 63 | 925 | |
増 減 | -3 | -4 | +1 | +1 | +17 | +14 | +1 | +10 | -2 | -5 | -1 | +33 | +65 | |
雇用形態別 | 社 員 | 28 | 28 | 33 | 37 | 31 | 37 | 34 | 32 | 39 | 51 | 41 | 47 | 437 |
パート | 17 | 18 | 24 | 31 | 24 | 22 | 23 | 26 | 16 | 18 | 18 | 24 | 261 | |
不明他 | 8 | 9 | 8 | 11 | 17 | 14 | 8 | 2 | 6 | 5 | 14 | 7 | 109 |
2. 雇用形態別、業種別の相談者数・相談件数
(1)雇用形態別の相談者・相談件数の状況 (添付資料3)
◇「不明その他」を含む8雇用形態の平均相談者数は124人、平均相談件数は205件で、 相談者数は「社員」「パート」「不明その他」で8割以上を占めています。
「社員」では男性が7割弱を占め、「パート」では女性が9割以上を占めています。
◇50人以上の相談者があった5雇用形態のうち「社員」「パート」「契約社員」「臨時・アルバイト」の相談者数は平年より増加し、 「不明その他」は減少しました。構成比では「社員」「臨時・アルバイト」も減少しました。 「臨時・アルバイト」以外で女性相談者の増加が男性より大きく、減少が小さかったことが、男女の相談者比率を拡大しました。
◇前記5雇用形態の相談件数はいずれも増加し、1人当たり相談件数は「臨時・アルバイト」が平均より0.2件多い1.9件、 「社員]「契約社員」が平均の1.7件、「パート」1.6件、「不明その他」1.4件であり、雇用形態により抱える問題の複雑さの違いが表れています。
(2)業種別の相談者・相談件数の状況 (添付資料5)
◇20業種のうち相談があったのは18業種で、18業種の平均相談者数は55人、平均相談件数は91件でした。 100人以上の相談者があった「(20)分類不能その他」(236人)「(10)卸・小売業・飲食店」(166人) 「(18)その他サービス業」(114人)の相談者数は全体の54%を占めています。
◇相談者数が50人以上あった6業種の相談者数および構成比は、平年と比べて「(13)医療・福祉・医薬品業」 「(10)卸・小売業・飲食店」「(4)建設・設計・重機業」の3業種は減少し、 「(18)その他サービス業」「(14)ビル管理業」「(20)分類不能・その他」の3業種では増加しました。
◇上記6業種の相談件数は平年に比べて「(10)卸・小売業・飲食店」以外は増加し、 相談者1人当たり相談件数は「(18)その他サービス業」1.8件、「(4)建設・設計・重機業」「(10)卸・小売業・飲食店」 「ビル管理業」1.7件、「(13)医療・福祉・医薬品業」1.6件、「分類不能・その他」1.3件となっています。
(3)雇用形態別・業種別の相談者分布 (添付資料2)
第3表は上記6業種と主要3雇用形態の連関表で、この中には「パート」男性を除く各雇用形態と各業種の最多相談者が含まれ、 各雇用形態および業種における相談者の65%以上が集中しています。
(第3表) 【男女雇用形態別・業種別相談者数分布、相談者集中度】
(網掛けは各雇用形態別び相談者の多い業種)
雇用形態 (人) | 社 員 | パート | 不明その他 | 全雇用形態計 | 3形態 集中度 |
|||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
業 種 | 男性 | 女性 | 男性 | 女性 | 男性 | 女性 | 男性 | 女性 | 合計 | |
(4)建設・設計・重機業 | 34 | 11 | 1 | 1 | 10 | 2 | 55 | 17 | 72 | 81.9% |
(10)卸・小売業・飲食店 | 58 | 15 | 4 | 54 | 4 | 3 | 73 | 93 | 166 | 83.1% |
(13)医療福祉・医療品業 | 11 | 35 | 2 | 18 | 1 | 3 | 15 | 66 | 81 | 86.4% |
(14)ビ ル 管 理 業 | 10 | 4 | 4 | 18 | 28 | 24 | 52 | 69.2% | ||
(18)その他サービス業 | 23 | 17 | 3 | 39 | 5 | 8 | 41 | 73 | 114 | 83.3% |
(19)分類不能・その他 | 64 | 37 | 1 | 54 | 25 | 35 | 98 | 138 | 236 | 91.1% |
全 業 種 計 | 293 | 144 | 23 | 238 | 54 | 55 | 449 | 541 | 990 | 81.5% |
6業種集中度(%) | 68.3 | 82.6 | 65.2 | 77.3 | 84.8 | 92.7 | 69.0 | 76.0 | 72.8 |
3. 相談項目別の相談者・相談件数
(1)相談項目別相談者数・相談件数の状況 (添付資料6)
◇26の相談項目のうち、「(14)定年制度・再雇用」を除く25項目について相談があり、25項目の平均相談者数は39.6人、 平均相談件数は65.6件となっています。
◇相談者が相談の主目的とする項目(1人1件、以下「主相談項目」)は、「賃金関係5項目」(194人、うち「(4)賃金未払ほか」108人、 「(5)残業代未払ほか」50人)が最も多く、「(11)解雇・雇止め・退職」(174人)「(6)就業規則・雇用契約」(91人) 「(22)経営問題・労務管理」(90人)の4項目で55.5%を占め、他の項目では66人以下となっています。
なお、「賃金関係」5項目を項目別に分けた後の多数相談者順は「(11)解雇・雇止め・退職」「(4)賃金未払ほか」となります。
◇相談件数の多い相談項目の相談件数は第4表のとおりで、7項目で相談件数の70%以上を占めています。
◇全項目の対平年相談件数が増加した項目は「(6)就業規則・雇用契約」(+59件)など14項目。 減少した項目は「(11)解雇・雇止め・退職」(-37件)など12項目。
相談件数の多い7相談項目の対平年構成比比較では、「(11)解雇・雇止め・退職』「賃金関係」「(9)労働時間・休憩・休日」 の3項目が9.3ポイント減。「(6)就業規則・雇用契約」「(22)経営問題・ 労務管理」「(21)差別・嫌がらせ・セクハラ」 「(16)雇用保険・労災保険」の4項目が6.4ホイント増。
なお、相談件数全体の大幅増加により、相談件数は前記9.3ポイント減に対して73件増。 同6.4ポイント増に対して149件増となり、「賃金関係」中の「(5)残業代未払い・問合わせ」は、 構成比は減となりましたが相談件数では1増となっています。
(2)相談項目別違法件数の状況 (添付資料7)
◇相談の内容が何らかの法律に抵触する違法件数は、相談件数1640件のうち659件あり、違法率は40.2%、 平年と比べて(平均)4.7ポイント減となっています。
◇26相談項目のうち、違法率80%以上の項目は「(20)男女差別・女性保護」「(4)賃金未払・遅配」、「(5)残業代未払・問合わせ」、 「(9)労働時間・休憩・休日]で、他の項目は50%以下。
◇平年と比較して違法率が増となった相談項目は「(9)労働時間・休憩・休日」「(22)経営問題・労務管理」「(4)賃金未払ほか」 「(26)その他」の4項目。
相談件数が多く、違法率減の程度が大きい項目は「(10)雇用保険・労災保険」「(6)就業規則・労務管理」 「(21)差別・嫌がらせ・セクハラ」「(11)解雇・雇止め・退職」など4項目
(3)相談項目別・男女雇用形態別相談件数分布 (添付資料8)
◇第4表は、相談件数の多い7相談項目と主要3雇用形態の連関表で、雇用形態別の最多および次位相談件数が含まれ、 主要な相談状況の傾向を示しています。
(第4表) 【相談項目別・男女雇用形態別相談件数分布】
(網掛けは男女雇用形態別の最多および次位相談件数の項目)
社 員 | パート | 契約 | 全雇用形態計 | 主要 相談 | 3形態 集中度 |
||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 女性 | 男性 | 女性 | 男性 | 女性 | 男性 | 女性 | 合計 | |||
賃 金 関 係 | 123 | 36 | 12 | 52 | 5 | 15 | 174 | 131 | 305 | (194) | 79.7% |
(6)就業規則・雇用契約 | 41 | 24 | 2 | 47 | 4 | 14 | 62 | 112 | 174 | (91) | 75.9% |
(9)労働時間関係 | 33 | 20 | 6 | 21 | 3 | 5 | 42 | 47 | 89 | (26) | 98.9% |
(11)解雇・退職・雇止め | 74 | 44 | 4 | 59 | 12 | 17 | 114 | 139 | 253 | (174) | 83.0% |
(16)労 働 保 険 | 20 | 9 | 3 | 27 | 2 | 4 | 40 | 53 | 93 | (66) | 69.9% |
(21)差別・嫌がらせ・セクハラ | 25 | 17 | 2 | 24 | 1 | 7 | 31 | 60 | 91 | (57) | 83.5% |
(22)経営問題・労務管理 | 45 | 26 | 4 | 50 | 8 | 6 | 65 | 99 | 164 | (90) | 84.8% |
全項目相談件数 (相談者数) |
507 (293) | 236 (144) | 41 (23) | 386 (238) | 42 (27) | 80 (37) | 755 (449) | 885 (541) |
1640 (990) | (990) | 78.8% (77.7) |
6業種集中度(%) | 71.2 | 74.6 | 80.5 | 72.5 | 83.3 | 85.0 | 64.4 | 67.1 | 65.9 | (70.5) |
(4)相談項目別・業種別相談件数分布 (添付資料9)
次表は、相談件数の多い上位7相談項目と上位6業種のうち「(20)分類不能・その他」を除く5業種における相談件数の連関表で、 各業種の最多および次位相談件数の項目が含まれています。
(第5表) 【業種別・相談項目別の相談件数分布】
(網掛けは業種別の最多および次位相談件数)
(4) 建設・ 設計・ 重機業 | (10) 卸・ 小売業・ 飲食店 |
(13) 医療福祉・ 医薬品業 | (14) ビル 管理業 | (18) その他 サービス業 |
全業種 合計 | 主相談 者 数 | 5業種 集中度 |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
賃 金 関 係 | 35 | 74 | 19 | 17 | 43 | 305 | (194) | 61.6% |
(6)就業規則・雇用契約 | 6 | 28 | 17 | 14 | 26 | 174 | (91) | 52.3% |
(9)労働時間関係 | 5 | 19 | 5 | 3 | 12 | 89 | (26) | 49.4% |
(11)解雇・退職・雇止め | 16 | 54 | 17 | 12 | 38 | 253 | (174) | 54.1% |
(16)労 働 保 険 | 12 | 15 | 4 | 5 | 9 | 93 | (66) | 48.4% |
(21)差別・嫌がらせ・セクハラ | 7 | 13 | 11 | 6 | 11 | 91 | (57) | 52.7% |
(22)経営問題・労務管理 | 8 | 24 | 20 | 10 | 30 | 164 | (90) | 56.1% |
全項目相談件数 (相談者数) |
119 (60) | 289 (124) | 133 (57) | 86 (44) | 205 (96) |
1,640 (990) | (990) | 50.7% (38.5) |
6業種集中度(%) | 74.8% | 78.5% | 69.9% | 77.9% | 82.4% | 71.3% | (70.5%) |