2006年1月 労働相談の状況について
「追い詰められる前に 求められる労働者教育」
1. 労働相談の状況について
(1) 相談者、相談件数について (資料-1)
▲ 1月は相談者数62人、相談項目数114件となり、前月より34人、49件減少しましたが、 過去3年(03〜05年)同月平均(63人、105件)と同じ傾向で、1人当たり平均相談項目数は増加しました。(表1)
(表1) 【相談者の男女別、主要雇用形態別年次比較】
項 目 | 相 談 者 数 | 構 成 比 | 相談 項目数 | 一人平 均件数 |
|||||||||
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男女別 | 雇用形態 | 男女別 | 雇用形態 | ||||||||||
年 月 | 合計 | 男性 | 女性 | 社員 | パート | 不明 | 男性 | 女性 | 社員 | パート | |||
06年1月 | 62 | 36 | 26 | 28 | 18 | 9 | 58.1 | 41.9 | 45.2 | 29.1 | 114 | 1.84 | |
05年 | 12月 | 96 | 51 | 45 | 47 | 24 | 7 | 58.1 | 46.9 | 49.0 | 25.0 | 163 | 1.69 |
通年 | 61 | 25 | 36 | 28 | 17 | 8 | 45.0 | 55.0 | 45.9 | 27.9 | 98 | 1.61 | |
04年1月 | 70 | 30 | 40 | 27 | 18 | 18 | 42.9 | 57.1 | 38.5 | 25.7 | 118 | 1.69 | |
03年1月 | 57 | 32 | 25 | 33 | 15 | 1 | 56.1 | 43.9 | 58.4 | 25.5 | 100 | 1.75 |
(2) 男女別・雇用形態別・業者数 相談者数について (資料-1)
▲ 男女別では男性が女性を10人、構成比率で16.2ポイン上回りました。(表1)
女性は過去3年間、通年で男性を上回り、逆転する月はランダムに年間で2〜4ヶ月ありますが、現在は昨年9月以降5ヶ月のうち、11月を除く4ヶ月は男性多数で推移しています。(表2)
▲ 雇用形態別構成では「社員」と「パート」がおよそ4分の3を占め(表1)、「不明その他」(9人 14.5)を除く「臨時」「派遣」「契約」「季節」の各雇用は3人以下で5%未満でした。
前年同月に比べて「社員」の構成比率は0.7ポイント減、「パート」は1.2ポイント増となりましたが、男性では前者が4.4ポイント増となりました。 また、「社員」および「パート」相談者の圧倒的な男女の差は前年同月に比べて縮小しました。(表2)
雇用形態が判明している相談者のうち、「社員(無期限雇用者)」と「期限付雇用者」の構成比率は前月および前年同月と同率(52.8%:47.2%)となり、構成比率の増減はありません。
(表2) 【 男女別相談者・構成比率 (人 %)】
05/9月 | 05/10月 | 05/11月 | 05/12月 | 06/1月 | 05年 | 平年 | 備 考 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 42 54.5 | 46 52.9 | 40 45.5 | 51 53.1 | 36 58.1 | 45.4 | 46.7 | ・平年3年平均 ・(社員)は男性の 社員内数 |
|
(社員) | 27 35.1 | 37 42.5 | 26 29.5 | 38 39.6 | 21 33.9 | 29.6 | 30.8 | ||
女性 | 35 45.5 | 41 47.1 | 48 54.5 | 45 46.9 | 26 41.9 | 54.5 | 53.3 | ||
社 員 | パート | 全雇用 計 | |||||||
06年1月 | 05年12月 | 05年1月 | 06年1月 | 05年12月 | 05年1月 | 06/1 | 05/12 | 05/1 | |
男性 | 21 69.2 | 38 80.9 | 18 64.3 | 4 22.2 | 3 12.5 | 0 0.0 | 58.1 | 53.1 | 41.0 |
女性 | 7 30.8 | 9 19.1 | 10 35.7 | 14 77.8 | 21 87.5 | 17 100 | 41.9 | 46.9 | 59.0 |
▲ 業種別では全20業種のうち12業種から相談があり、前年(通年)の構成比率と比べて「卸・小売業・飲食店」が10.7ポイント前後のマイナスとなりました。
(3) 相談項目別・雇用形態別・男女別 相談者数について (資料-2)
▲ 全114件の相談項目件数は全26項目中19項目にわたり、うち、(11)解雇・退職・雇止め、( )賃金関係項目(内訳は資料2参照)、(22)経営問題・労務管理、 (6)就業規則・雇用契約の4項目で全体の約55%を占めています。(表3)
それぞれの構成比率を前年(通年)と比べると、(22)経営問題・労務管理が3.2ポイント、(11)解雇・退職・雇止め、(21)差別・嫌がらせ・セクハラ、 (7)配転・出向・転籍が2〜2.4ポイント増加し、賃金関係項目が3.7ポイント、(6)就業規則・雇用契約が1.0ポイント減少しています。件数は少ないものの、(7)転籍・出向・転籍も2.0ポイント増加しています。
これらの傾向は、就業規則や雇用契約の欠陥と、杜撰な労務管理の横行が相変わらず続いており、激しい苛めや嫌がらせなどにより、解雇・退職に追い込まれる状況の深刻化を示しております。
(表3) 【主な相談項目の対前年構成比率比較・「社員」「パート」の男女別相談件数】
相 談 項 目 | 1月件数・ 比率(人 %) | 05年 比率 | 増減 | 社 員 | パート | 全件数 | |||
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男性 | 女性 | 男性 | 女性 | 男性 | 女性 | ||||
(11)解雇・退職・雇止め | 20 17.5 | 15.4 | +2.1 | 10 | 1 | 3 | 4 | 14 | 6 |
( )賃金関係項目 | 17 14.9 | 18.6 | -3.7 | 8 | 4 | 1 | 0 | 12 | 5 |
(22)経営問題・労務管理 | 15 13.2 | 10.0 | +3.2 | 6 | 3 | 1 | 2 | 10 | 5 |
(6)就業規則・雇用契約 | 11 9.6 | 10.6 | -1.0 | 3 | 1 | 1 | 2 | 8 | 3 |
(26)そ の 他 | 10 8.8 | 5.3 | +3.5 | 1 | 1 | 0 | 3 | 3 | 7 |
(21)差別・嫌がらせ・セクハラ | 9 7.9 | 5.5 | +2.4 | 1 | 0 | 1 | 6 | 3 | 6 |
(7)配転・出向・転籍 | 4 3.5 | 1.5 | +2.0 | 2 | 0 | 0 | 2 | 2 | 2 |
▲ 雇用形態別の相談件数および構成比率は、「社員」(56件 49.1)、「パート」(34件 29.8)で8割をしめており、「不明その他」(14件 12.3)のほか、「臨時」「派遣」「契約」「季節」雇用が5件未満の構成となっております。
これを「社員」と「パート」の男女別に見ると、抱える問題が異なっている事が判ります。
(4) 相談項目別・業種別別 相談件数について (資料-3)
▲ 相談項目件数114件の業種別分布は「卸・小売業・飲食店」(28件 24.6)、「分類不能・その他」(23件 20.2)、「製造業」(12件 10.5)、 「医療・福祉・医薬品業」および「その他サービス業」(各11件、9.6)で全体の4分の3を占め、その他の6業種が8件以下となっています。
▲ 主な業種別と相談項目別の分布は、各業種が抱える問題を鮮明に表し、表4の5相談項目、6業種に相談件数の大部分が集中しており、それぞれの特徴を見ることができます。
「卸・小売業・飲食店」および「その他サービス業」では(11)解雇・退職などが多く、(22)経営問題・労務管理、(21)嫌がらせなどが関係していると見られます。 前者の業種では(6)就業規則・労働契約がより大きい問題とされています。 (22)経営問題・労務管理は「製造業」「医療・福祉・医薬品業」でも問題とされ、前者の業種ではこれが賃金問題に関連していると見られます。 「分類不能・その他」では賃金問題に比較的集中していますが、他は多項目に分散しており、「建設・設計・重機業」では特別集中する項目はありませんでしたが記載外の長時間労働などに2件の相談があります。
(表4) 【 主要業種および主要相談項目の集中状況 (件)】
業 種 | 建設・ 設計・ 重機業 | 製造業 | 卸・小売業・ 飲食店 |
医療・福祉 ・医療品業 | その他 サービス業 |
分類不能 その他 | 他12 業種計 |
全業種 合計 | 6業種の 集中率(%) |
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相談項目 | |||||||||
賃金関係項目 | 0 | 5 | 2 | 1 | 1 | 5 | 3 | 17 | 82.4 |
(賃金・残業代未払い等) | (0) | (5) | (1) | (1) | (1) | (3) | (2) | (13) | (84.6) |
就業規則・労働契約 | 2 | 1 | 3 | 2 | 0 | 2 | 1 | 11 | 90.9 |
解雇・雇止め・退職 | 2 | 1 | 7 | 2 | 3 | 2 | 3 | 20 | 85.0 |
差別・嫌がらせ・セクハラ | 0 | 0 | 3 | 1 | 3 | 0 | 2 | 9 | 77.8 |
経営問題・労務管理 | 0 | 3 | 5 | 3 | 0 | 1 | 3 | 15 | 80.0 |
その他15項目 計 | 4 | 2 | 8 | 2 | 4 | 13 | 9 | 42 | 78.6 |
全項目 合計 | 8 | 12 | 28 | 11 | 11 | 23 | 21 | 114 | 81.6 |
5項目の集中率(%) | 50.0 | 83.3 | 71.4 | 91.7 | 81.8 | 43.5 | |||
相 談 者 数 | 4 | 3 | 17 | 9 | 5 | 14 |
2. 雇用情勢について
▲ 厚生労働省は、2月1日、2005年は景気回復を背景に正社員が増加したと発表しましたが、北海道では未だ正社員、中でも男性が職場から追われる状況が継続し、むしろ深刻化しています。
その最大の証明は、通年では女性より少ない男性相談者が前年9月から5ヶ月の間に、女性を上回る月が4ヶ月にもなり、「社員」である男性相談者の増加によってこの現象が続いていることです。(表2)
▲ 「社員」男性(21人)の相談項目は、「解雇・退職」が約半数(10件)を占め、「賃金関係」(8件、「賃金・残業代未払・賃金控除」6件)、 「経営問題・労務管理」(6件)、「退職金」(3件)など、「解雇・退職」関連と不払いに代表される「賃金問題」に関する相談が大部分であり、その原因が経営問題や労務管理にあることがここに示されています。 また、相談者の20%が労働組合加入(地域ユニオン)の相談をしていることも特異な現象で、男性社員に対する使用者の支配の過酷さと問題の深刻さが表れています。
▲ 「解雇・退職・雇止め」問題は「パート」にも重くのしかかっており、相談者18人の約40%にあたる7人、男性では4人中3人からこの問題で相談が寄せられました。 さらに重要な問題は女性に対する「差別・嫌がらせ・セクハラ」(女性6件、男性1件)で、解雇の規制が厳しくなった現在、苛めなどで自主退職に追い込むケースや、 職場の管理能力のない社員や上部管理者が、成果だけ求めて「パート」を非人間的に扱うケースが目立っています。
▲ 業種別では(表4)に見るように、以上の問題が「卸・小売業・飲食店」「その他サービス業」に突出して現れています。 また「経営問題・労務管理」は「製造業」「医療・福祉・医療品業」(相談は医療・福祉関係のみ)でも大きな問題であり、全体として労働者を育てる経営者の気風がなくなり、 使用者の管理能力も低下し、労働者を鞭打って使い棄てる風潮が強まっています。
労働者が追い詰められる前に、人間らしく働き、生活する当然の権利を自ら守れるように、働くための教育を学校と社会を通じて積極的に行なわなければなりません。 このことについて、労働組合は厳しい姿勢で取り組む必要があります。
3.【 参考添付資料 】
資料−1 2006年1月 相談者数(男女雇用形態別・職業別)、その他処理件数