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連合・さっぽろ労働相談センター 札幌圏雇用センサス 第17号

2006年5月10日

2006年4月 労働相談の状況について

「制裁と抑圧に苦しむ労働者」

1. 労働相談の概況について

(1)相談者、相談件数について (資料-1)

2月以降、相談者は前年までの数を大きく上回ってきましたが、4月は相談者数112人(対前月12人増)、相談項目数210件(同68件増)、 1人当たり相談件数は1.9件となり、過去最高を記録しました。 また、相談内容における違法率は43.3%となり、今年初めて40%を突破しました。

(表1)          【 月別相読者数比較 】         (単位:人)

月別1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月合計
06年6299100112(373)
05年617085929091797477878896990
平年637284917882786778908874946

(2) 男女別・雇用形態別・業種別 相談者数について (資料-1)

男女別相談者数は女性74人(66.1%)、男性38人(33.9%)で、男女比は最近2ヵ月で約2倍に拡大しました。 なお、男性の65.8%は社員が、女性の60.8%はパートか占めています。

(表2)       【 男女別相談者数および構成比率 】      (人・%)

今年1月同 2月同 3月同 4月05年4月平年4月
女   性2641.95050.55959.07466.16267.45863.5
女性パート(内数)1422.61919.22121.04540.22830.4
男   性3658.14949.54141.03833.93032.63336.5

雇用形態別相談者数は、パート50人、社員32人、契約社員10人で8割以上を占めました。 このうちパート女性は対前月2倍超の45人となり、社員女性は3分の1(7人)に激減しました。

これにより、雇用形態が明確な103人のうち「期限付雇用者」が71人を占め、「無期限雇用者」(社員)(32人)の2.2倍となりました。

業種別相談者は13業種に及び「卸・小売業・飲食店」22人、「分類不能その他」18人、「医療福祉・医薬品業」17人、 「その他サービス業」12人が前月に続き上位を占めましたが、相談者数が対前月増となったのは「分類不能その他」を除く3業種と「食品加工業」で、 主として女性バートおよび男性社員が増加しています。

(表3)    【 4業種の社員・パート、男女別相談者数および対前月増減 】

社 員パート全雇用形態合計
女性男性女性男性女性男性合計
食品加工業1+1005+31+17+52+29
卸・小売業・飲食店005+212+111014+108+122
医療福祉・医薬品業2-52+28+70015+52+117
その他サービス業0-35+34+1105-37+412
全業種合計7-1325+245+245+374+1538-3112

表3は前記4業種における社員とパートの相談者分布と増減を示したもので、女性パートと男性社員の相談者が特に増えています。 女性パートは他に3業種で6人増加し2業種で4人減少しました。

(3) 相談項目別・雇用形態別・男女別相談件数について (資料-2) (表4)

全相談項目数210件の項目別分布は22項目に及び、件数の多い項目は前月と同じく「(6)就業規則・雇用契約」(37件)、 「賃金関係項目(内訳は資料2参照)」(36件)「(11)解雇・退職・雇止め」「(22)経営問題・労務管理」(各24件)の4項目で、 合わせて57.6%を占めました。

主要な相談項目の月別構成比の推移を表4に示します。各項目中、「(11)解雇・退職・雇止め」の構成比は今年最低となっていますが、 女性社員(10件)の減少が大きく、女性パート(7件)、男性社員(5件)は逆に増加しています。

相談件数の雇用形態別分布は相談者数の多寡に相似しており、対前月68件の増加の内訳は、増加74、減少6で、 増加のうちパートが66件(女性62件、男性4件)を占めています。

(表4)      【 主要相談項目の月別構成比 】   (単位:人・%)

賃金関係
項  目
就業規則
雇用契約
労働時間
関係項目
解雇・雇
止・退職
雇用保険
労災保険
経営問題
労務管理
1月1714.9119.654.42017.522.61513.2
2月3218.31910.9116.32614.9148.0169.1
3月1812.72416.942.82719.064.2107.0
4月3617.13717.6136.22411.4157.12411.4

(表5)   【 主要相談項目の社員・パート相談件数、対前月増減 】 (単位:件)

賃金関係
項  目
就業規則
雇用契約
労働時間
関係項目
解雇・雇
止・退職
雇用保険
労災保険
経営問題
労務管理
社 員5+23-20-22-102+13+2
13+85-1107+51-16+3
パート10+518+1310+108+78+710+7
3+32+10-12+20000
集中度(%)86.173.784.679.273.379.2

(注) 「集中度」は当該項目相談件数の「社員+パート」構成比

表5は主要相談項目で70%以上の相談件数を占める社員、パートそれぞれの項目別重要度と相談件数の増減を示しています。 「賃金関係項目」「経営問題・労務管理」は共通の重要項目であり、「解雇・雇止め・退職」は男性社員と男女パートにとって、 「就業規則・雇用契約」は男女パートにとって、また「雇用保険・労災保険」は女性にとって、それぞれ重要な相談項目となっています。

(4) 相談項目別・業種別 相談件数について (資料-3)

相談項目数210件の業種別分布は13業種に及び、相談件数は「卸・小売業・飲食店」「医療・福祉・医薬品業」(各41件)、 「その他サービス業」(30件)の3業種で過半数を占めました。 この3業種では対前月相談件数が合計60件増加し、その3分の2は女性パートの相談が占めてます。

(表6)         【 主要3業種の上位相談項目 】

相談項目順 →1位2位3位4位5位全件数
医療福祉・医薬品業(6) 7件賃 6件(22) 6件(16) 4件(21) 4件41件
卸・小売業・飲食店賃 9件(6) 8件(22) 6件(21) 5件(9) 4件41件
その他サービス業(6) 8件(11) 7件賃 6件30件

(凡例) 賃:賃金関係項目、(6):就業規則・雇用契約、(9)労働時間関係、(11)解雇・雇止め・退職、
(16):雇用保険・労災保険、(21):差別・嫌がらせ・セクハラ、(22):経営問題・労務管理

表6は主要3業種の上位相談項目の傾向を示したもので、「(6)就業規則・雇用契約」「賃金関係項目」は共通の上位項目であり、 「(22)経営問題・労務管理」「(22)差別・嫌がらせ・ヤクハラ」は「医療福祉・医薬品業」「卸・小売り・飲食店」の共通項目となっており、 「(16)雇用保険・労災保険」「(9)労働時間関係」「(11)解雇・雇止め・退職」は業種固有の重要項目となっています。

2.雇用情勢について

(1) 報道に触発された女性パートの相談が激増

今年は2月以降相談者が激増していますが、4月は女性パート相談者が前月の2倍超に増えました(表2、表3)。 主な要因は、小泉改革が格差を生み、拡大したことから、新聞・デレビが特集を組んで報道した非正規雇用者の過酷な労働や生活の実態に触発されたことにあると推測されます。

このことは、相談者一人あたり相談項目数が前月までの平均1.7件から1.9件に増え、女性パートは2.0件と相談の視点が広がったことでも明らかです。

(2) 杜撰な労務管理により拡大する過酷な労働者支配

しかしこれにより、労働現場の実態は不法な労働者支配によって過酷な労働や労使問題が拡大していることが明らかになりました。

表6の主要3業種の相談者は女性パートと男性社員が増加した業種ですが、上位相談項目に現れている職場の状況は、就業規則が無いもの、 雇用契約とは言えない口頭での労働条件通知、求人票や広告の内容と異なる労働条件、一方的労動者支配が一体をなしており、 これによって長時間労働の強制と残業代の不払いがあり、賃金・諸手当および労動時間等の不利益変更が口頭通告だけて行われ、 労働保険や社会保険に加入させない脱法行為、集中的嫌がらせによる退職強要、または損害賠償請求などの脅迫による退職妨害などがあります。 相談数は少ないものの、運搬車両の修理代や規定量を超えた燃料の代金の労働者負担、ホームヘルパーの交通費カット、 収益目標未達額の給料控除など、企業が負担すべき費用を様々な形で労働者から巻き上げる例が増える傾向にあります。

(3) 制度改革による障害者介護事業荒廃の兆し

4月は「障害者自立支援法」の6月施行を前に、障害者介護施設における相談が複数ありました。

同法の施行によって見込まれる減収対策として、職員の労働条件の改悪、労働強化および入所者の選別や退所強要の問題が労働者から提起されています。 これらは、入所している障害者の保護者を巻き込んだ施設経営のあり方に及ふ問題であると共に、事業の特殊性に伴う専門職労働者の熱意に依存している問題もあり、 介護保険法施行に伴う高齢者介護施設で発生した問題と同様、施設、労働者、保護者の信頼の環が破れた場合、事業の荒廃は免れず、 総合的な取り組みを必要としています。

また障害者から、授産所で働く障害者に対する苛め、異常な低賃金などの相談もあり、障害者自立支援法が新たな問題を生んでいます。

(4) 問題解決に対する積極性の希薄化

相談者、相談項目の増加に伴い、問題に立ち向かい、解決する当事者の意欲の衰退も拡大していることが気にかかります。 発生している問題を問題として捉える感覚や当事者として解決プロセスに関わる積極性が希薄化し、密かに相談し告発することで、 当面する問題が解消されることを期待する風潮かあります。 個々の相談を総合してみると、この現象は労働者として生きるための基礎知識が欠落していることをベースにして、 職場で労働者が個別に管理されてそれぞれが自己の世界を形成し、同僚と相談したり情報交換する職場状況にないこと、 生活に困窮するほどの低賃金で働くパートなどに問題解決に取り組む時間的、経済的余裕かないことなどに主要な原因があると思われます。

【 参考添付資料 】

資料−1 2006年4月 相談者数(男女雇用形態別・業種別)、その他処理件数 【PDF】

資料−2 2006年4月 労働相談 (男女雇用形態別・相談内容別) 【PDF】

資料−3 2006年4月 労働相談 (業種別・相談内容別) 【PDF】

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