2006年8月 労働相談の状況について
「社員、パートを襲う解雇・退職トラブルと違法労務管理」
1. 労働相談の概況
(1)相談者数、相談項目数 (参考資料-1、同-2、同-4、表1)
8月は相談者52人、相談者数88件、1人当たり相談項目数は1.7件となりました。 前月に比べて各3人減、11件減、 0.10件減で、前年同月とは22人減、27件減、0.15件増となりました。
相談者数は例年7、8月に減少しますが、最も多い月の相談者数と比較した例年20%前後のところ、今年は約50%減少しています。
相談内容に見る違法率は35.2%で、今年累計の1ヵ月平均40.0%に対しやや低下しました。
(表1)【 月別相談者数比較 】(人)
月別 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
06年 | 62 | 99 | 100 | 112 | 75 | 117 | 55 | 52 |
05年 | 61 | 70 | 85 | 92 | 90 | 91 | 79 | 74 |
平年 | 63 | 72 | 84 | 91 | 78 | 82 | 78 | 67 |
(2)男女別・雇用形態別・業種別相談者数 (参考資料-2、表2)
1. 男女別の相談者数は、女性28人(53.8%)、男性24人(46.2%)で、 男女比率は前年同月(女 52.7、男47.3)と今年累計(1〜8月、女54.6、男45)の中間にあります。
2. 無期雇用(社員)の相談者(34.6%)、有期雇用(非社員・不明)34人(65.4%)で、 構成比は今年累計に比ぺて無期雇用で9.6P(Pはポイント)減少し、有期雇用で増加しました。 増減の大きい雇用形態・男女別は、バート女性の8.3P増、社員女性の7.1P減です。
3. 相談者は、延長社長とパートで全休の73%を占めました。今年累計(73.5%)とほぼ同じですが、内訳では社員か減少し、 バートが増加しています。
(表1)【 主な雇用形態別・男女構成比率 】(人)
社員 | パート | 契約社員 | 不明他 | 総合計 | |
---|---|---|---|---|---|
女性 | 7.7(14.6) | 34.6(26.3) | 5.8(4.2) | 3.8(5.7) | 53.8(54.6) |
男性 | 26.9(29.6) | 3.8(3.0) | 7.7(4.8) | 5.8(4.2) | 46.2(45.4) |
(注) ( )は今年累計(1〜8月)の1ヶ月平均相談者の構成比
4. 業種別では、20業種中12業種に分布し、 「分類不能その他」「卸・小売業、飲食店」「医療福祉・医療品業」「建設・設計・重機業」「陸運・倉庫業」で5人以上の相談者がありました。
その分布は、今年累計構成比と比ぺて「建設・設計、重機業」「陸運・倉庫業」ではそれぞれ5.1P、2.8P上昇し、 「卸・小売業、飲食店」「分類不能その他」では2P以上の低下、「医療福祉・医療品業」では横ばいでした。 また「ビル管理業」では相談者4人でしたか22P増加し、通常は上位の「その他サービス業」では相談者2人で、 3分の1(3.8%)に低下しました。
(3)相談項目別・雇用形態別・男女別 相談件数(参考資料-3、同-5)
1. 相談件数は19項目で88件あり、「(11)解雇・退職・雇い止め」「賃金項目5項目(内訳は資料3参照)」 「(22)経営問題・労務管理」の3項目で88件の2分の1を占め、さらに「(20)差別・嫌がらせ・セクハラ」 「(6)就業規制・労働契約」「(16)労働保険」を加えると約3分の2を占めます。
これらの相談件数分布は、今年累計に比べて「(11)解雇・退畿・雇止め」「(20)差別・嫌がらせ・セクハラ」 「(16)労働保険」「(22)経営問題・労務管理」では上回り、「(6)就業規則・労働契約」「賃金関係5項目」では下回りました。 (表3-1)
(表3-1)【 主要相談項目の男女別相談件数構成 】(%)
相談項目 | 賃金関係 5項目 | 就業規則・ 雇用契約 | 解雇・退職 ・雇止め |
雇用保険・ 労災保険 | 差別・嫌がらせ ・セクハラ | 経営問題・ 労務管理 |
||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
男女別 | 男性 | 女性 | 男性 | 女性 | 男性 | 女性 | 男性 | 女性 | 男性 | 女性 | 男性 | 女性 |
8月構成 | 5.7 | 8.0 | 4.5 | 4.5 | 11.4 | 11.4 | 5.7 | 2.3 | 3.4 | 6.8 | 4.5 | 9.1 |
今年累計 | 8.4 | 7.3 | 6.9 | 8.5 | 7.3 | 8.2 | 1.6 | 3.5 | 1.4 | 5.2 | 5.3 | 5.9 |
増 減 | -2.7 | +0.7 | -2.4 | -4.0 | +4.1 | +3.2 | +4.1 | -1.2 | +2.0 | +1.6 | -0.8 | +3.2 |
(表3-2)【 主要雇用形態別相談件数分布 】(人)
相談項目 | 賃金関係 5項目 | 就業規則・ 雇用契約 | 解雇・退職 ・雇止め |
雇用保険・ 労災保険 | 差別・嫌がらせ ・セクハラ | 経営問題・ 労務管理 |
||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
男女別 | 男性 | 女性 | 男性 | 女性 | 男性 | 女性 | 男性 | 女性 | 男性 | 女性 | 男性 | 女性 |
社 員 | 4 | 0 | 1 | 2 | 8 | 3 | 4 | 0 | 0 | 0 | 2 | 2 |
パート | 0 | 6 | 0 | 1 | 0 | 7 | 0 | 2 | 1 | 2 | 1 | 4 |
契約社員 | 0 | 0 | 2 | 1 | 2 | 0 | 0 | 0 | 1 | 3 | 0 | 1 |
派 遣 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 |
その他形態 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 |
総合計 | 5 | 7 | 4 | 4 | 10 | 10 | 5 | 2 | 3 | 6 | 4 | 9 |
2. 主要相談項目の雇用形態別相談件数の特徴は以下のとおりです。(表3−2)
「賃金関係5項目」:パート女性と社員男性で80%以上を占めており、男性相談の減少により女性が多数となりました。 5項目の分布状況は通常と同じ傾向を示しています。
「就業規則・労働契約」:女性相談の減少が上回って男女が同数になり、50%以上を占めてきたバート女性と社員男性に代わって、 社員女性と契約社員男性が50%を占めました。
「解雇・退職・雇止め」:男性相談の増加が上回って男女が同数になり、社員女性の相談が大きく減少し、 社員男性とバート女性の相談が突出しています。
「雇用保険・労災保険」:男性相談の増加で男性多数となり、社員男性が60%近くを占めています。 通常は40%を占めているパート女性の相談は減少しました。
「差別・嫌がらせ・セクハラ」:通常は女性相談が約80%を占めていますが、男性の相談が非社員全体で増加し、 社員男女の相談はゼロ、パート女性の相談も著しく減少しました。
「経営問題・労務管理」:パートを中心に女性の相談が増加し、男性の2倍となりました。
(4)相談項目別・業種別 相談件数(参考資料-4、同-6、表4)
1. 相談件数の多い6業種(表-4)で全88件の約4分の3を占めています。 相談者数4人の「ビル管理業」の相談件数は「卸・小売業・飲食店」(16件)に次いで13件となり、 相談者1人当たり3.5件は8月平均のl.7件の杓2倍であり、多くの複雑な間題があることを示しています。
2. 主要相談項目の業種別件数の特徴は以下のとおりです。
「貸金関係5項目」:構成比は13.6%で今年累計を下回りましたが、「卸・小売業・飲食店」が約42%を占め、2.5P増となりました。
「就業規則・労働契約」:構成比は9.1%で今年累計を下回りましたが、「ピル管理業」では今年累計を2.3P上回りました。
「解雇・雇止め・退職」:構成比は22.7%で今年累計を約30%上回りました。相談は9業種で20吽あり、 相談件数構成比は「陸運・倉庫業」を除く各相談項目で今年累計を上回りました。
「雇用保険・労働保険」:相談件数は比較的少ないものの、構成比では今年累計に比べて17.6P上回り、最大の増加となりました。 相談は各業種で2件以下となっています。
「差別・嫌がらせ・セクハラ」:構成比は10.2%で今年累計を上回りました。相談は各業種で2件以下となっています。
「経営問題・労務管理」:構成比は13.6%で今年累計を上回りました。相談は9業種に及び、 相談件数は「建築・設計・重機業」の3件を除いて2件以下となっています。
(表4)【 主要業種別相談件数分布 】(人)
相談項目別 | 賃金関 係項目 | 就業規則・ 雇用契約 | 解雇・退職 ・雇止め |
雇用保険・ 労災保険 | 差別・嫌がらせ ・セクハラ | 経営問題・ 労務管理 |
その他 相談項目 | 合 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
業種別 | ||||||||
建設・設計・重機業 | 0 | 0 | 4 | 0 | 1 | 3 | 1 | 9 |
陸運・倉庫業 | 0 | 0 | 1 | 2 | 1 | 1 | 2 | 7 |
卸・小売業・飲食店 | 5 | 1 | 5 | 1 | 0 | 1 | 2 | 16 |
医療福祉・医療品業 | 2 | 2 | 3 | 0 | 0 | 1 | 2 | 9 |
ビル管理業 | 1 | 3 | 1 | 1 | 2 | 2 | 3 | 13 |
分類不能・その他 | 2 | 0 | 2 | 2 | 1 | 0 | 4 | 11 |
その他業種 | 2 | 2 | 4 | 1 | 4 | 4 | 7 | 23 |
総合計 | 12 | 8 | 20 | 7 | 9 | 12 | 20 | 88 |
2. 雇用情勢
1. 8月の相談者は今年の月平均に比べて全体で38%減少し、社員が52%減少したのに対してパートは19%減に止まりました。 社員、バートとも「解雇・雇止め・退職」の相談が突出しています。
社員では同項目の相談件数が約37%を占めて月平均の2倍以上となり、特に男性が2.4倍に増えたことにより、 相談件数もパートを上回りました。また、同項目のパート相談は女性のみで19.4%を占め、月平均の第4位から8月は第1位になりました。
社員、パートいずれの職場の場合も相談件数が減少した中で、職場の「解雇・雇止め・退職」のトラブルはむしろ増加しており、 バートでは「就業規則・労働契約」の相談が著しく減少していることから、時期的に契約更新問題よりも解雇・退職のが増加しています。
同項目の業種別相談件数は「卸・小売業・飲食店」「建設・設計・重機業」「医療福祉・医療品業」に多く、 月平均第5位の「建設・設計・重機業」は3.2倍に増えて第2位になりました。
また、関連する「合理化・倒産・企業閉鎖」の相談件数が月平均の1.7倍に増え、 北海道の産業構造に根ざした経営環境の厳しさの結果が、雇用形態の別なく労働者にしわ寄せされています。
2. 強まるパート労動者に対する労務管理の違法
パート労働者の主な相談項目は、件数の多い順に「解雇・雇止め・退職」「賃金関係」「経営問題・労務管理」「有給休暇」で、 前記の「解雇・雇止め・退職」のほか、月平均第7位の「有給休暇」が上位になり、同第1位の「就業規則・労働契約」は相談数1件に減少しました。
これらは、解雇・退職に関連した未払賃金、残余の有休消化問題の増加、時節がらお盆の有休取得に関するトラブルであり、 これらに関して、労働者を欺いて違法な取扱いを貫こうとする使用者側の、杜撰で狡猾な「労務管理」の問題が共に存在しており、 問題にしなけれぱなりません。
【 参考添付資料 】
資料−1 2006年8月 月別労働相談処理状況 【PDF】
資料−2 2006年8月 相談者数(雇用形態・男女別、業種別) 【PDF】
資料−3 2006年8月 労働相談(男女雇用形態別・相談内容別) 【PDF】
資料−4 2006年8月 労働相談(業種別・相談内容別」 【PDF】
資料−5 2006年 雇用形態別 相談者数月別集計 月別集計件数月別集計 【PDF】
資料−6 2006年 業種別 相談者数月別集計 月別集計件数月別集計 【PDF】
資料−7 2006年 主相談項目別 相談者数月別集計 【PDF】
資料−8 2006年 相談項目別 相談件数別集計 【PDF】
資料−9 2006年 月別相談内容別違法件数集計 【PDF】
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