2006年12月 労働相談の状況について
「法改定による医療・福祉職場崩壊の危機」
1. 労働相談の概況
1) 相談者数・件数について 参照資料-1 「2007年1月 月別労働相談処理状況」
相談者数は73人、相談項目数は154件となりました。対昨年比では+11人・+40件となりました。 一人当たりの件数では2.10件となり昨年を0.27ポイント上回っています。
2) 相談者の男女別について
相談者の男女別は、男性44人、女性45人とほぼ同数でした。
3) 雇用形態別相談者数について
相談者の雇用形態では、社員が45人、社員以外の期限付き雇用契約者39人、不明その他5人で、社員が一番多い結果となりました。
4) 業種別相談者数
相談者が働く会社を業種別に見ると、今月は「医療福祉・医薬品業」が、毎月第1位の「卸・小売業・飲食店」を抜いて最も多く、相談者数は20人(22%)でした。
次いで「卸・小売業・飲食店」12人(13%)、「建設・設計・重機業」8人(9%)、「その他サービス業」6人(7%)の順となっています。
これら相談が多い業種の男女別を見ると、「建設・設計・重機業」を除き、いずれも男性より女性の数が多くなっています。
5) 相談項目について
12月の相談内容を項目別に見ると、「就業規則・雇用契約」が第1位で25件(16%)、「解雇・雇い止め・退職」が24件(15%)で第2位、以下、「賃金」20件(13%)、「経営問題・労務管理」15件(9%)、「労働保険(雇用・労災)」11件(7%)、「労災・職業病・安全衛生」10件(6%)と続いています。
第1位の「就業規則・雇用契約」について男女雇用形態別に見ると、男性正社員(8人)と女性パート(5人)が多く、総数の男女比率は男性15・女性10となっています。業種別では「医療・福祉・医薬品業」が最も多く6人です。
第2位の「解雇・雇い止め・退職」は、男性正社員10人、女性パート6人、女性正社員5人、男性契約社員3人から相談があり、総数の男女別は男性13人女性11人となりました。業種別では「卸・小売・飲食店」が7人と際立って多く、「医療・福祉・医薬品」4人、「建設・設計・重機業」3人と続いています。
第3位の「賃金」20件の内容は、@月例賃金未払い・遅配7、A残業手当未払い5、B一時金・諸手当4の順に多く、この項目では男性14人・女性6人と、男性が極端に多くなっています。雇用形態別では正社員が12人と際立って多く、他に契約社員2、パート2、臨時2、嘱託1、派遣1と、様々な雇用形態で働く人から相談がありました。
前年同月との相談項目別比較
相談項目 | 全体に占める割合(%) | 増減 | |
---|---|---|---|
05年12月 | 06年12月 | ||
賃金総計 | 15.3 | 12.6 | -2.7 |
賃金−月例賃金未払い・遅配 | 4.3 | 4.4 | +1 |
賃金−残業手当未払い | 6.8 | 3.1 | -2.3 |
就業規則・雇用契約 | 11.0 | 15.7 | +4.7 |
長時間労働 | 3.7 | 3.8 | +0.1 |
有給休暇 | 3.1 | 3.1 | 0 |
解雇・雇い止め・退職 | 14.8 | 15.1 | +0.3 |
退職金 | 3.7 | 0.6 | -3.1 |
合理化・倒産・企業閉鎖 | 6.1 | 2.5 | -3.6 |
雇用・労災保険 | 5.5 | 6.9 | +1.4 |
社会保険・年金 | 1.8 | 3.1 | +1.3 |
税金問題 | 2.5 | 0 | 2.5 |
労災・職業病・安全衛生 | 6.1 | 6.3 | +0.2 |
差別・嫌がらせ・セクハラ | 4.3 | 5.7 | +0.6 |
男女差別・女性保護 | 2.5 | 0 | -2.5 |
経営問題・労務管理 | 4.9 | 9.4 | +4.5 |
昨年同月との比較では、「就業規則・雇用契約」と「経営問題・労務管理」の項目への相談が増加し、「退職金」「合理化・倒産・企業閉鎖」が減少しています。
退職金」についての相談が減ったことは、もともと退職金制度がない期限付き雇用契約者が増加していることを反映していると言えます。
例年、年末に集中して相談が寄せられていたパートのいわゆる「税金問題(103万問題)」についての相談は、今月は1件もありませんでした。収入限度を超えないようパートタイマーが出勤調整することに対して企業側が協力的であったり、初めから短時間雇用にするなど、主婦パートを積極的に活用しようとする企業の意思がうかがえます。
2. 12月の雇用情勢
12月は「医療福祉・医薬品業」に従事する人の相談が際立って多い結果となりました。20人から相談があり、そのうち正社員は13人です。相談が多い項目は、「就業規則・雇用契約」、「解雇・雇い止め・退職」、「月例賃金未払い・遅配」の順となっています。
病院や歯科医院、福祉施設、また最近増えたグループホームで働く労働者や、在宅介護ヘルパーが劣悪で不安定な労働条件で働いていることが推測されます。これら労働者の労働条件はもともと決して良いとは言えない上に、昨今の医療福祉分野の法律改定が、労働者の働かされ方にも大きく影響しているものと推測されます。
また、相談項目を昨年同月と比較すると、「合理化・倒産・企業閉鎖」が減少し、「就業規則・雇用契約」、「経営問題・労務管理」が大幅に増加しています。
就業規則や契約書など労働条件に関する書面がなく、労働条件が極めてあいまいであったり、また、採用時の雇用に関する約束事が使用者側から一方的に反故にされるなど、最低限のルールも守られない中で働きながら、立場の弱さから条件を明確にする働き掛けをすることができない労働者の切実な声が多く寄せられています。
【 参考資料 】
資料−1 「06年12月相談者数(雇用形態・男女別、業種別)、処理内容」 【PDF】
資料−2 「2006年12月労働相談(男女雇用形態別・相談内容別)」 【PDF】
資料−3 「2006年12月労働相談(業種別・相談内容別)」 【PDF】
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