2005年10月 労働相談の状況について
「正社員の居場所はあるのか、相談急増/気になる 労災相談の増加」
1.労働相談の概況について
(1)相談者数について (資料-1)
▲相談者数87人、相談項目数138件となり、先月より相談者数が10人、相談項目数が11件増えました。 10月の相談者数が9月に比べて十数パーセント増えるのは例年の傾向ですが、前年同月と比べても相談者8人、相談項目数19件の増となりました。
相談者1人あたりの相談項目数は各月平均と同じ1.6件でした。
【 2005年1月から10月までの相談者数、相談項目数の推移 】
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
相談者数 (人) | 61 | 70 | 85 | 92 | 90 | 91 | 79 | 74 | 77 | 87 | 806 |
相談項目数 (件) | 98 | 123 | 130 | 136 | 165 | 156 | 139 | 115 | 127 | 138 | 1327 |
1人当たり件数 | 1.6 | 1.8 | 1.5 | 1.5 | 1.8 | 1.7 | 1.8 | 1.6 | 1.6 | 1.6 | 1.6 |
(2)雇用形態・業種別相談者数について(資料-1)
▲雇用形態別では社員、中でも男性社員の相談者が突出して多く、異例の傾向を示しました。
相談者数87人の内訳は、「社員」51人(58.6%、以下カッコ内は%省略)「制限付雇用者」36人(41.4)で、後者は「パート」18人、 「派遣」8人、「契約」3人、「臨時」「季節」各1人、「不明その他」5人に分かれています。
▲男女別分布は、1から10月累計で女性55.4%に対し、10月は男性53%(46人)、女性47%(41人)で、6月、9月に続いて男性が上回りました。 男性のうち「社員」は37人で、全相談者の42.5%、男性相談者の80.4%を占めました。 女性は「パート」(16人)が「社員」を2人上回りましたが、累計の分布比率5対3と比べると、パート相談者は著しく減少しています。
「パート」の分布率は男女合わせて20.7%で、累計分布率を6.7ポイント下回りました。
【社員・パート・全雇用形態の相談者比率:相談者数(分布率)】
男性 | 女性 | |||
---|---|---|---|---|
10月 | 1〜10月累計 | 10月 | 1〜10月累計 | |
社員 | 37人(42.5) | 229人(28.4) | 14人(16.1) | 121人(15.0) |
パート | 2人(2.2) | 20人(2.5) | 16人(18.4) | 199人(24.7) |
全雇用形態 | 46人(52.9) | 358人(44.4) | 41人(47.1) | 448人(55.6) |
▲業種別では20業種のうち、「不明・その他業種」が19人で最も多く、「卸・小売業・飲食店」11人、「建設・設計・重機業」「商品斡旋・リース業」「ビル管理業」各8人、 「陸運・倉庫業」「医療・福祉・医薬品業」各6人、「その他サービス業」5人と続いています。 相談者数が月平均より著しく多かった業種は「商品斡旋・リース業」(2.7倍)、「ビル管理業」(1.8倍)で、 反対に著しく少なかった業種は「製造業」(0.3倍)「その他サービス業」(0.5倍)などです。
なお、一般に制限付雇用者の相談比率が多い「医療・福祉・医薬品業」「建設・設計・重機業」において今回は「社員」の相談者がそれぞれ83.3%(5人)、75.0%(6人)を占めました。
(3)相談項目別・雇用形態別相談件数について(資料-2)
▲相談項目数138件の主な項目分布は、「賃金関係」32件(未払い25件)、「解雇・雇止め・退職」24件、「契約関係」23件、「差別・嫌がらせ・セクハラ」12件、 「労災・職業病・安全衛生」「経営問題・労務管理」各9件、「合理化・倒産・企業閉鎖」6件、「配転・出向・転籍」「有給休暇」「雇用保険・労災保険」各4件となっています。
件数が月平均5件以上の項目で、当該平均より著しく増えたのは「契約関係」「労災・職業病・安全衛生」(各1.7倍)、「差別・嫌がらせ・セクハラ」(1.6倍)で、 平均件数3.8件の「合理化・倒産・企業閉鎖」も1.6倍に増えました。 反対に著しく減ったのは「勤務(労働時間)関係」(0.1倍)、「雇用保険・労災保険」(0.5倍)、「有給休暇」「経営問題・労務管理」(各0.6倍)でした。
【 主な相談件数の増減(対月平均相談数5件以上の項目) 】
相談項目 | 月平均相談件数 | 10月相談件数 | 増減(倍) |
---|---|---|---|
契約関係 | 13.4件 | 23件 | 1.72 |
労災・職業病・安全衛生 | 5.3件 | 9件 | 1.70 |
差別・嫌がらせ・セクハラ | 7.4件 | 12件 | 16.2 |
勤務(労働時間)関係 | 7.4件 | 1件 | 0.13 |
雇用保険・労災保険 | 7.4件 | 4件 | 0.54 |
有給休暇 | 6.5件 | 4件 | 0.62 |
経営問題・労務管理 | 14.5件 | 9件 | 0.62 |
▲雇用形態別では、「社員」76件、「パート」29件、「派遣」16件で全体の87.7%を占めており、 他に「契約」6件、「季節」2件、「臨時」1件、「不明その他」8件の分布となっています。
社員では、「賃金関係」22件(未払い16件)、「解雇・退職」14件、「契約関係」「差別・嫌がらせ・セクハラ」各8件の順に多く、 「賃金関係」の68.7%、「差別・嫌がらせ・セクハラ」の66.7%を占め、他に「合理化・倒産・企業閉鎖」も件数は5件ながら83.3%を占めています。
パートでは、「契約関係」7件、「賃金関係」6件(未払い5件)、「解雇・雇止め・退職」「経営問題・労務関係」各4件の順に多く、 「経営問題・労務管理」9件はパートと社員のみで占めています。
派遣では「契約関係」6件が最も多く、当該項目の27.3%を占めています。
(4)相談項目別・業種別相談件数について(資料-3)
▲相談項目数138件の業種別分布は、「不明その他」の30件が最も多く、次いで「卸・小売業・飲食店」「ビル管理業」各14件、「陸運・倉庫業」13件、 「商品斡旋・リース業」12件、「建設・設計・重機業」「医療・福祉・医薬品業」各11件、「その他サービス業」10件、「バス・タクシー業」8件、 「労働派遣業」5件の順に多く、他の業種は1〜2件となっています。
▲相談件数10件以上の業種における相談項目集中の状況は、「陸運・倉庫業」を除いて下表の7項目でそれぞれ78.5%以上を占めており、 また、7相談項目の業種別集中状況でも下表の上位8業種でそれぞれ概ね75%以上を占めています。 なお、表外23件の集中度は2件が2点、1件が19点の分布となっています。
【 主要業種および主要相談項目の集中状況(件) 】
業種 | 建設・設計・重機業 | 陸運倉庫業 | 卸・小売業・飲食店 | 商品斡旋・リース業 | 医療・福祉・医療品業 | ビル管理業 | その他サービス業 | 分類不能その他 | 他12業種計 | 全業種合計 | 8業種の集中率% |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
相談項目 | |||||||||||
賃金関係 | 2 | 1 | 5 | 1 | 2 | 3 | 2 | 8 | 8 | 32 | 75.0 |
契約関係 | 1 | 1 | 1 | 4 | 1 | 3 | 6 | 6 | 23 | 73.9 | |
解雇・雇止め・退職 | 2 | 1 | 7 | 1 | 2 | 3 | 3 | 3 | 2 | 24 | 91.7 |
合理化・倒産・企業閉鎖 | 1 | 2 | 1 | 1 | 1 | 0 | 6 | 100 | |||
労災・職業病・安全衛生 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 2 | 1 | 12 | 83.3 | ||
差別・嫌がらせ・セクハラ | 2 | 3 | 2 | 2 | 1 | 2 | 12 | 83.3 | |||
経営問題・労務関係 | 1 | 1 | 1 | 1 | 3 | 2 | 9 | 77.8 | |||
その他15項目 計 | 1 | 6 | 0 | 1 | 2 | 3 | 2 | 6 | 2 | 23 | |
全項目 合計 | 11 | 13 | 14 | 12 | 11 | 14 | 10 | 30 | 23 | 138 | |
7項目の集中率 % | 90.9 | 53.8 | 100 | 91.7 | 81.8 | 78.6 | 80.0 | 80.0 |
2.雇用情勢について
▲社員雇用者の危機的状況がますます募っています。社員の相談者数は6月まで40%以下で推移していきましたが、7、8月に3ポイント上昇し、 9月には相談者数、相談項目数とも50%を超え10月は相談者数で58%、相談項目数で55%を越えて急激に増加しました。特に男性社員は前月に比べて31%増となりました。 社員相談者は「不明その他」を19業種中12業種に及び、相談項目では「賃金関係」「解雇・退職」「差別・嫌がらせ・セクハラ」「契約関係」「合理化、倒産、企業閉鎖」「経営問題・労務管理」 で相談件数の80%以上を占めています。「合理化、倒産、企業閉鎖」の相談は2、3月に目立ちましたが10月に再び増加したもので、これらの状況からは、 企業業績は道内ではむしろ下降線を辿っており、その中で社員が、合理化やリストラを迫られ、あるいは苛めを含む退職強要などの陰湿な社員管理が急速に強化拡大していることが伺えます。
▲派遣雇用者の相談者数も9月、10月は月平均の約2倍に増えています。 相談項目は「契約関係」「解雇・雇止め・退職」「賃金未払い」で70%を占め、 派遣雇用者の場合も実態は違法な働かせ方の強要と雇止めの脅しなど、過酷な労働状況が拡大しています。
▲パート雇用者からの相談者数は9月、10月とも減少し、20人を割っています。 社員相談者の急増の裏側でパート雇用者の労働関係が安定化し、社員からパートへの切り替えが進んでいるとも考えられますが、 労働項目では「契約関係」「解雇・雇止め・退職」「経営問題・労務管理」で50%を超え、就業にかかる使用者側のずさんな管理は変っていないことが示されています。
▲全体の相談項目別では「労災・職業病・安全衛生」が9件で今年の最高値になりました。 「社員」4件、「パート」3件、「不明その他」2件の分布となっています。 この項目は労働者が働き続ける能力を維持できるか否かに関わる解雇問題以上に重要なものでありながら、 経営状況や労務管理に強く影響されるものであり、相談件数の増加は使用者側の都合で就業環境の悪化が進んでいることを意味しています。
3.参考資料
資料−1 2005年10月 相談者(男女雇用形態別・職業別)、その他処理件数