2005年8月 労働相談の状況について
「業績優先主義から生ずる雇用危機」
1.労働相談の概況について
(1)相談件数について
相談者数は74人、相談項目数は115件となりました。対前年比では相談者数が12人の増となり、 相談項目数では24件の増となっています。対前月比では相談件数は5件減で、相談項目では24件の減となっています。 1人当たりの相談項目数も前月の1.75件に対して1.55件と減少傾向となっています。 2005年の1月から8月までの相談者数と相談項目数の推移は以下のとおりです。
【 2005年1月から8月までの相談件数・相談項目数の推移 】
月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 合計 |
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項目 | |||||||||
相談者数 (人) | 61 | 70 | 85 | 92 | 90 | 91 | 79 | 74 | 642 |
相談項目数 (件) | 98 | 123 | 130 | 136 | 165 | 156 | 139 | 115 | 1062 |
1人当たり相談項目数 | 115 | 1.60 | 1.52 | 1.47 | 1.83 | 1.71 | 1.75 | 1.55 | 1.65 |
(2)雇用形態別等相談者数について
相談者数74人の内訳は、社員32人・期限付雇用者42人としております。
期限付雇用者の内訳は、パートタイマー26人、臨時7人、契約社員5人、派遣1人、嘱託1人、不明2人となっています。 相談者を雇用形態別で考察すると、社員比率が高く43%を上回る状況となっています。
男女別では、男性35名・女性39名の配分となっており、女性の中、11名は社員となっています。 相談者に占める社員・期限付雇用者の比率は前月より差が縮まっており、男女差の比率も同じく縮まっています。 女性・男性ともに各雇用形態から相談が寄せられている状況です。
【 雇用形態別・男女別相談者数 】
雇用形態 | 相談者数 | 男性(占有率) | 女性(占有率) |
---|---|---|---|
社 員 | 32人 | 21人(28.3) | 11人(14.8) |
契 約 | 5人 | 1人(1.3) | 4人(5.4) |
パート | 26人 | 5人(6.7) | 21人(28.3) |
臨 時 | 7人 | 5人(6.7) | 2人(2.7) |
嘱 託 | 1人 | 1人(1.3) | 0人(0.0) |
季 節 | 0人 | 0人(0.0) | 0人(0.0) |
派 遣 | 1人 | 1人(1.3) | 0人(0.0) |
不 明 | 2人 | 1人(1.3) | 1人(1.3) |
合 計 | 74人 | 35人(47.2) | 39人(52.7) |
(3)相談項目別及び雇用形態別 相談数について
相談項目数115件の内訳では、「解雇・雇い止め・退職」が26件、賃金項目(支払関係に集中)22件となっております。 以下、順に「有給休暇」10件、「経営問題・労務管理」10件、「労災職業病」7件、「差別・嫌がらせ・セクハラ」6件、 「就業規則・雇用契約」4件、「勤務」項目総数4件、「組合加入・結成・上部加盟」4件等となっています。
雇用形態別では、社員50件、パートタイマー37件、臨時12件、契約6件、嘱託2件、派遣1件及び不明7件となっています。 男女別では男性53件、女性622件となっています。
1人当たり相談件数は男性1.51に対して女性が1.58となり、男女の差が縮まっていますが、 社員の場合は1人当たり相談件数が男性1.47に対して女性1.72と女性が高めになっております。
また相談項目の分布を雇用形態別に検証すると、社員の場合は「解雇・雇い止め・退職」に多く集中し、 パートタイマーの場合は「解雇・雇い止め・退職」と賃金項目(支払関係に集中)に相談が集中しています。 また「差別・嫌がらせ・セクハラ」「経営問題・労務管理」について、 社員とパートタイマーを含む期限付雇用者の総数が同じであること、 また合理化や配転等についても社員以外からも相談が寄せられる状況となっています。
【 相談内容別・雇用形態別 労働相談件数 】
雇用形態 | 社 員 | 契 約 | パート | 臨 時 | 嘱 託 | 季 節 | 派 遣 | 不明他 | 合 計 | |||||||||||
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相談内容 | M | F | M | F | M | F | M | F | M | F | M | F | M | F | M | F | M | F | 計 | |
賃 金 | 賃上げ・賃下げ | |||||||||||||||||||
一時金・諸手当 | ||||||||||||||||||||
最 低 賃 金 | 1 | 1 | 2 | 2 | ||||||||||||||||
月例賃金未払・遅配 | 1 | 2 | 5 | 1 | 1 | 1 | 2 | 9 | 11 | |||||||||||
給 与 控 除 | ||||||||||||||||||||
残業手当 未払 | 1 | 2 | 2 | 1 | 3 | 3 | 6 | |||||||||||||
残業手当 問合せ | 1 | 1 | 1 | 1 | 2 | 1 | 3 | |||||||||||||
賃 金 小 計 | 2 | 3 | 2 | 2 | 7 | 2 | 1 | 2 | 1 | 9 | 13 | 22 | ||||||||
契 約 | 就業規則・雇用契約 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 3 | 4 | ||||||||||||
一方的身分変更 | 1 | 1 | 1 | |||||||||||||||||
配転・出向・転籍 | 1 | 1 | 1 | 1 | 2 | |||||||||||||||
勤 務 | 長時間労働 | 2 | 2 | 2 | ||||||||||||||||
休暇・休日 | 1 | 1 | 1 | 1 | 2 | |||||||||||||||
労働時間延長・短縮 | ||||||||||||||||||||
勤 務 小 計 | 3 | 1 | 1 | 3 | 4 | |||||||||||||||
有給休暇 | 1 | 3 | 2 | 3 | 1 | 4 | 6 | 10 | ||||||||||||
解雇・雇い止め・退職 | 10 | 3 | 1 | 2 | 1 | 7 | 2 | 14 | 12 | 26 | ||||||||||
合理化・倒産・企業閉鎖 | 1 | 1 | 1 | 1 | 2 | |||||||||||||||
定年制度・再雇用 | ||||||||||||||||||||
退 職 金 | 1 | 1 | 1 | 1 | 2 | |||||||||||||||
労働保険(雇用・労災) | 2 | 1 | 1 | 2 | 2 | 4 | ||||||||||||||
社会保険(健保・年金) | 1 | 1 | 1 | 1 | 2 | 2 | 4 | |||||||||||||
税金問題 | ||||||||||||||||||||
労災・職業病・安全衛生 | 4 | 1 | 1 | 1 | 6 | 1 | 7 | |||||||||||||
差別・嫌がらせ・セクハラ | 3 | 1 | 2 | 3 | 3 | 6 | ||||||||||||||
経営問題・労務管理 | 2 | 2 | 4 | 1 | 1 | 4 | 6 | 10 | ||||||||||||
組合加入・結成・上部加盟 | 1 | 1 | 2 | 1 | 3 | 4 | ||||||||||||||
地域ユニオン | ||||||||||||||||||||
職業紹介・求人 | ||||||||||||||||||||
その他 | 1 | 1 | 1 | 1 | 3 | 2 | 5 | 7 | ||||||||||||
合 計 | 31 | 19 | 1 | 5 | 6 | 31 | 8 | 4 | 2 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 4 | 3 | 53 | 62 | 115 |
(4)業種別 相談数について
相談項目数115件を業種別分布で見た場合、分類不能(23件)を除き「卸・小売業・飲食店」(22件)、「その他サービス業」(18件)、 「建設・設計・重機業」(12件)、「製造業」(9件)、「医療・福祉・医薬品業」と「通信・IT・報道」(8件)の順位となっています。
今月は、相談を寄せる雇用者が属する業種は12業種となっていますが、先の7業種からの相談が大半を占めていること、 そして相談項目内容を見た場合、設定28の項目中17項目に点在する状況にあります。 その中でも「賃金」と「解雇・雇い止め」の問題は業種が広がる傾向に、「卸・小売業・飲食店」「その他サービス業」では、 相談項目が広がる傾向にあります。
【 業種別相談内容 】
業種別分類 | 農林漁業・協同組合 | 食 品 加 工 業 | 建設・設計・重機業 | 製 造 業 | 通信・報道・IT業 | バス・タクシー業 | 陸運・倉庫業 | 卸・小売業・飲食店 | 商品斡旋・リース業 | 金融保険・不動産業 | 医療福祉・医療品業 | ビ ル 管 理 業 | 労働者派遣業 | 教 育・学 校 | その他サービス業 | 公務・公共サービス | 分 類 不 能 | 合 計 | |
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相談内容 | |||||||||||||||||||
賃 金 | 昇給・引下げ | ||||||||||||||||||
一時金・諸手当 | |||||||||||||||||||
最低賃金 | 1 | 1 | 2 | ||||||||||||||||
月例賃金未払い・遅配 | 1 | 1 | 1 | 3 | 3 | 2 | 11 | ||||||||||||
給与控除 | |||||||||||||||||||
残業手当未払い | 1 | 1 | 1 | 3 | |||||||||||||||
残業手当問い合せ | 1 | 1 | 1 | 3 | |||||||||||||||
賃金小計 | 2 | 1 | 2 | 2 | 6 | 1 | 6 | 2 | 22 | ||||||||||
契約 | 就業規則・雇用契約 | 1 | 1 | 2 | 4 | ||||||||||||||
一方的身分変更 | 4 | 4 | |||||||||||||||||
配転・出向・転籍 | |||||||||||||||||||
派遣・人夫貸し | |||||||||||||||||||
勤 務 | 長時間労働 | 1 | 1 | 2 | |||||||||||||||
休暇・休日 | 1 | 1 | 2 | ||||||||||||||||
労働時間延長・短縮 | |||||||||||||||||||
勤務小計 | 1 | 2 | 1 | 4 | |||||||||||||||
有給休暇 | 3 | 1 | 2 | 1 | 1 | 2 | 10 | ||||||||||||
解雇・雇い止め・退職 | 4 | 3 | 1 | 1 | 7 | 1 | 1 | 3 | 5 | 26 | |||||||||
合理化・倒産・企業閉鎖 | 1 | 1 | 2 | ||||||||||||||||
定年制度・再雇用 | |||||||||||||||||||
退 職 金 | 1 | 1 | 2 | ||||||||||||||||
労働保険(雇用・労災) | 1 | 1 | 1 | 1 | 4 | ||||||||||||||
社会保険(健保・年金) | 1 | 1 | 1 | 1 | 4 | ||||||||||||||
税金問題 | |||||||||||||||||||
労災・職業病・安全衛生 | 2 | 1 | 1 | 3 | 7 | ||||||||||||||
差別・嫌がらせ・セクハラ | 2 | 2 | 1 | 1 | 6 | ||||||||||||||
経営問題・労務管理 | 2 | 1 | 1 | 2 | 3 | 1 | 10 | ||||||||||||
組合加入・結成・上部加盟 | 1 | 2 | 1 | 4 | |||||||||||||||
地域ユニオン | |||||||||||||||||||
職業紹介・求人 | |||||||||||||||||||
その他 | 1 | 1 | 1 | 4 | 7 | ||||||||||||||
合 計 | 4 | 12 | 9 | 8 | 7 | 22 | 2 | 8 | 1 | 1 | 18 | 23 | 115 |
2.雇用情勢について
社員の雇用危機が身近であることが目立ちます。相談者数・相談項目数の両方で43%以上を占めるまでの広がりをみせています。 相談状況に関する男女差が縮まり、また雇用種別でいう社員の相談件数等が件数項目共に増えております。 この状況から、昨年より間違いなく、雇用の不安定化が進んでいるといえます。 社員からの相談内容について検証すると、男女比では女性の比率が増えています。
そして相談項目は、殆ど全ての設定項目に該当する状況です(賃金・契約・勤務を大きく1項目として捉える)。
項目の詳細では、解雇・雇い止めが飛び抜けていますが、これは解雇・雇い止めを中心とし相談とし、付随して賃金支払、保険問題、 原因として合理化や差別嫌がらせ問題があると思われます。男女ともに、 「経営問題・労務管理」・「差別・嫌がらせ・セクハラ」に相談があり、 社員であれば男女を問わず非常に厳しい状況下に於かれているといえます。 また、男性は、労災・職業病についても相談があり、より厳しいと言えますが、男女差が縮まる傾向にあるという状況では、 女性もいずれ男性並みの厳しい状況におかれると予想されます。
パートタイマーの相談に、今月も「経営問題・労務管理」「配転・出向・転籍」があることから、 パートタイマーに対する契約内容以上の業務上の負荷があると思われます。
卸・小売・飲食店」「その他サービス業」の相談に4割弱が集中することと、パートタイマーの相談項目の点在振りの近いことから、 「卸・小売・飲食店」「その他サービス業」の主たる労働力がパートタイマーであり、 そこに過度なノルマによる雇用不安が発生していることが伺われます。
社員は男女を問わず、社内占有率を減少させ代替をパートタイマーとし、過度なノルマを課して成果を期待する。 業績優先主義から生ずる雇用危機が進む状況にあるといえます。
3.参考添付資料
資料―1 2005年8月 相談者数(男女雇用形態別・業種別)、その他処理件数